ナビエ=ストークス方程式の基礎
流体の運動は、物理学の中でも特に複雑かつ美しい現象の一つです。 その支配方程式であるナビエ=ストークス方程式 (Navier-Stokes Equations) は、ニュートンの運動方程式を流体(連続体)に適用することで導かれます。
支配方程式
非圧縮性(密度 が一定)のニュートン流体(粘性が一定)を考えると、支配方程式は以下の2つになります。
1. 連続の式 (質量保存則)
流体が湧き出したり消滅したりしないことを表します。非圧縮性流体では、速度場の発散がゼロになることを意味します。
ここで は流速ベクトルです。
2. ナビエ=ストークス方程式 (運動量保存則)
流体微小要素に対する運動方程式 です。
各項の意味は以下の通りです。
- 左辺第1項 : 局所的な時間変化(非定常項)。
- 左辺第2項 : 移流項(対流項)。流体が移動することによって運ばれる運動量の変化を表します。この非線形項が流体現象の複雑さ(乱流など)の主因です。
- 右辺第1項 : 圧力勾配項。圧力差によって生じる力です。
- 右辺第2項 : 粘性項(拡散項)。流体の粘り気による摩擦力を表します。 は動粘性係数です。
- 右辺第3項 : 外力項(重力など)。
数値計算における困難
この方程式を数値的に解く上での最大の課題は、圧力 の扱いです。 状態方程式( など)が存在する圧縮性流体とは異なり、非圧縮性流体では圧力を決定する直接的な方程式がありません。 その代わり、圧力は「連続の式 を満たすように定まる」という役割を担っています。
次節で紹介する MAC法 などの数値解法では、ポアソン方程式を解くことで、この条件を満たす圧力を計算します。
この「速度と圧力の連成」をどのように解くかが、CFD(数値流体力学)の核心部分となります。