はじめに
本書は、プログラミング言語Rustを用いた計算物理学の実践的な入門書です。数値計算の基礎から物理シミュレーションの実装までを体系的に解説し、Rustを用いた科学技術計算の基礎を身につけることを目的とします。
本書の目的
計算物理学は、現代の物理学研究において不可欠な手法です。解析的に解くことが困難な問題に対し、数値計算を用いることで具体的な解を得ることができます。一方、Rustは安全性とパフォーマンスを両立したプログラミング言語として注目を集めています。
本書は、これら2つの分野を結びつけ、Rustを用いて計算物理学の基本的な手法を実装することを通して、その原理の理解を深めることを目的としています。本書が、読者の皆様ご自身による物理シミュレーションの設計・実装、そして結果の分析の一助となることを目指します。
本書では、AI agent を用いた開発を推奨します。定型的な実装、入出力、テスト雛形、プロット用スクリプト、エラー調査、差分確認などは agent に任せることができます。一方で、生成されたコードの物理的・数値的な正しさは自動的には保証されません。本書では、Rust、数値計算、物理の基本概念をもとに、agent の出力を読み、実行し、検証する力を重視します。
想定読者
本書は、以下のような読者を想定しています。
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Rustを学びながら計算物理を実装したい方:変数、関数、所有権といったRustの基本概念を、必要に応じて公式ドキュメントを参照しながら学べる方を対象とします。高度なRustの知識は前提としませんが、簡単なプログラムを書いた経験があることを想定しています。
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理工系の学部上級生から大学院修士初年程度の方:力学、電磁気学、熱力学・統計力学、量子力学といった基礎的な物理学の知識を前提とします。ただし、各章では必要に応じて関連する物理概念の簡単な復習を行います。
プログラミングや物理学の専門家である必要はありません。これらの分野を学びながら実践的なスキルを習得したい学生や研究者の皆様に最適な内容です。
Note
Rustを未習得の方へ
Rustに初めて触れる方は、本書と並行して、公式ドキュメントを必要に応じて参照してください。公式ドキュメントは非常に丁寧に記述されており、Rustの基本概念を体系的に学ぶことができます。
特に、変数と可変性、所有権、構造体、列挙型、パターンマッチ、トレイトなどの章は、本書を読み進める上で重要な基礎となります。最初にすべてを完全に理解する必要はありません。演習で必要になった箇所を戻って確認する進め方で十分です。
本書の特徴
本書には、以下のような特徴があります。
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実践重視のアプローチ:理論的な解説も行いますが、それ以上に、実際にコードを記述して実行し、結果を検証するプロセスを重視しています。各章で具体的な実装例を提示し、読者の皆様がご自身の手で試すことができるように構成しています。
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体系的・網羅的な内容:数値計算の基礎に始まり、常微分方程式、偏微分方程式、モンテカルロ法、並列計算、可視化に至るまで、計算物理学の主要なトピックを幅広く網羅しています。
本書で扱う内容
本書は、大別して以下の4部構成です。
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第1部 基礎編:Rustと計算物理学の関係、開発環境、計算機の基本モデル、 Rustで数値計算を書くための最小セット、多次元データ、
ndarray、データ保存について解説します。 -
第2部 数値計算手法:科学計算の核となる技術を扱います。数値微分・積分、非線形方程式、線形代数、フーリエ解析、常微分方程式、偏微分方程式、モンテカルロ法などの数値解法を実装し、その特性の理解を深めます。
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第3部 物理シミュレーション:実際の物理現象をシミュレートします。古典力学、流体力学、統計力学(イジング模型など)、量子力学といった、多様な物理分野における計算手法を解説します。
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第4部 高度なトピック:より実用的なシミュレーション技術を扱います。並列計算による高速化、SIMD最適化、パフォーマンス測定などを通じて、実践的な技術を習得します。
本書の使い方
本書は、基本的に最初の章から順に読み進めることを推奨します。ただし、特定のトピックにご興味がある場合は、必要な章から読み始めることも可能です。第1部(基礎編)は、それ以降の章における前提知識となる項目が多いため、一度目を通されることを推奨します。
各章は、概ね以下の構成で展開されます。
- 概念の理解:トピックの物理的・数学的背景を簡潔に解説します。
- 実装:Rustによる具体的な実装方法を示します。
- 結果保存と可視化:コードを実行し、得られた結果を保存して確認します。
- 考察:結果の解釈や、手法の特性について考察します。
掲載されているコードは、ご自身の手で実行してみることを強く推奨します。エラーへの対処や、期待した結果が得られない場合の試行錯誤は、学習における重要なプロセスです。こうした経験を通じて、より深い理解を得ることができます。
本書について
本書は、櫻庭が卒業研究として作成したRust計算物理学チュートリアルをもとに、 品岡寛が全体構成、科学的内容、演習、AI agent を用いた開発方針を拡張したものです。
執筆にあたり、AI(大規模言語モデル)を活用していますが、生成された内容はすべて著者によって事実確認およびコードの動作検証が行われています。AIは執筆を効率化するための補助的なツールとして用いており、内容の正確性については著者が責任を負います。
本書が、これから計算物理学を学ばれる皆様や、Rustを用いた科学技術計算にご興味をお持ちの方々にとって、有益な一助となれば幸いです。
フィードバックと貢献
本書の内容には万全を期しておりますが、誤字脱字、理論的な誤り、 あるいはコードの不具合などが含まれている可能性がございます。 もし何かお気付きの点や改善のご提案がございましたら、 GitHubリポジトリ へのIssueの作成、またはPull Requestを送付いただけますと幸いです。 ご報告は日本語で問題ございません。 皆様からのフィードバックは、本書の品質向上に不可欠です。
また、「この説明が理解しにくい」「このようなトピックも扱ってほしい」といったご意見も歓迎いたします。読者の皆様と共に、より良い教材を構築していければ幸いです。
ライセンス
本書は、CC0 1.0 Universal (CC0 1.0) Public Domain Dedicationライセンスの下で公開されています。著作者は、著作権法上認められる最大限の範囲で、本書に対する著作権および関連する権利を放棄しています。本書の内容は、教育、研究、商用を問わず、自由に利用、改変、再配布が可能です。
それでは、Rustによる計算物理学の世界をお楽しみください。