イジング模型の基礎
統計力学において、イジング模型 (Ising Model) は最も単純かつ最も重要なモデルの一つです。 もともとは強磁性体(磁石)の性質を理解するために考案されましたが、現在では合金の規則化、気体-液体の相転移、さらにはニューラルネットワークのモデルとしても広く応用されています。
モデルの定義
個の格子点(スピン)があり、各スピン は (上向き)または (下向き)のいずれかの状態をとるとします。
系の全エネルギー(ハミルトニアン) は、隣り合うスピン間の相互作用 と、外部磁場 との相互作用によって以下のように定義されます。
ここで は、隣接するスピンのペア(最近接格子点)に対する和を表します。
- (強磁性): 隣り合うスピンが同じ向き ( または ) になるとエネルギーが下がります(安定化)。これが「揃おうとする力」を生み出し、自発磁化の原因となります。
- (反強磁性): 隣り合うスピンが逆向きになろうとします。
統計力学の原理
温度 の熱平衡状態において、系がある特定のスピン配置 をとる確率は、ボルツマン分布 (Boltzmann distribution) に従います。
ここで は逆温度( はボルツマン定数)、 は確率の総和を1にするための規格化定数で、分配関数 (Partition Function) と呼ばれます。
この を計算できれば、内部エネルギーや比熱、磁化といったあらゆる熱力学量が求まります。 しかし、スピン数が のとき、可能な配置の総数は となり、少し大きな系(例: でも 通り)では計算不能な大きさになります。
そこで登場するのが、モンテカルロ法で学んだマルコフ連鎖モンテカルロ法 (MCMC) です。 すべての配置を足し合わせるのではなく、ボルツマン分布に従って「確からしい」配置をサンプリングすることで、物理量を近似的に計算します。
総合演習への接続
2D Ising実践演習では、2次元正方格子イジング模型の厳密解について、導出ではなく検証に必要な性質を note にまとめます。 臨界温度、自発磁化、有限サイズでは になる対称性、 と の使い分けを整理してから、実装計画に進みます。